明日の株式相場に向けて=「理外の理」の大相場演じる東電HD

週明け4日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比218円高の2万6153円と反発。前週末の米国株市場では6月の米ISM製造業景況感指数が前月から低下し、不況の影がチラつき始めたが、これが10年債利回りの低下につながり、今回はこちらの方を好感してNYダウが上昇。この流れを引き継いで、東京市場にも自律反発の順番が回ってきた。

そうしたなか、原発関連株が怒涛の上昇波動をみせている。英国金融街シティーでの岸田首相の講演では、日本語スピーチに唐突に織り込んだ「インベスト・イン・キシダ」が色々な意味で話題を呼んだが、その際に政策骨子のひとつに掲げられていた原発再稼働に向けた思惑が株式市場でもクローズアップされた。それがここにきて奔流と化している。

市場では「政権内でも原発推進派とそうでないところがあって、これは政策を進めていくうえで微妙な意味合いも含んでいる。例えば太陽光発電推進派にすれば、送電線網の枠を原発に回され空きが少なくなってしまうことでネガティブな雰囲気も漂う」(中堅証券マーケットアナリスト)と指摘する声がある。また、今月10日に投開票される参院選は自民圧勝の可能性が高いとみられているが、そうなると現政権は盤石となり、岸田首相は2025年までの黄金の3年間を手にすることになる。この場合、与党は祝勝ムード一色に染まるわけではない。経済産業省の色が濃かった安倍派にすれば「(自民党が)参院選を勝ち過ぎても財務省とのコネクションが強い岸田氏の色が出やすくなり、芳しくないというのが本音」(同)という見方がある。したがって原発再稼働に向けた思惑も、選挙後に岸田首相自らが流れを変えないとも言い切れないのだが、少なくとも今の東京市場はアトムパワーが全開であることは間違いない。

当欄でも継続的に追ってきた東京電力ホールディングス<9501.T>だが、驚いたことにきょうはプライム市場の値上がり率トップに買われた。時価総額は1兆円を超え、巨大仕手株の片鱗を本当に見せ始めている。きょうは80円高の659円まで上値を伸ばす場面があったが、あの1円刻みの分厚い売り板を躊躇なく踏み潰していくのだから、ある意味モンスター級である。

このまま電力需給の逼迫や柏崎刈羽原発の再稼働に向けた思惑だけで、東電HDが一直線に騰勢を強めていくとは正直思えないが、そう思えない向きが空売りを積み上げて踏み上げ相場の肥やしになってしまうというケースは、これまでに何度も目にしてきた光景でもある。東電HDは三菱重工業<7011.T>と同様に水素周辺技術などの研究にも長じており、今見えていない材料が近い将来に出てくる可能性もゼロではない。いずれにせよ、「需給はすべての材料に優先する」という先人の至言が、東電HDの「理外の理」というよりない上昇相場で嫌と言うほど証明されている。

こうなると、原発関連株に位置付けられる銘柄に物色の矛先が向くのは当然の流れでもある。東京エネシス<1945.T>は大陽線で4ケタ大台を大きく回復。また、助川電気工業<7711.T>も上昇を加速させた。相対的に上値の重い木村化工機<6378.T>などもジワリと水準を切り上げている。

ここで新たに注目しておきたいのは、原発向けバルブ・アクチュエーターで圧倒的な商品シェアを誇る日本ギア工業<6356.T>だ。既に動意含みとなっているが、株価はまだ200円台後半と値ごろ感がある。業績も23年3月期は急回復が予想され、PBR0.4倍台という会社解散価値の半値以下に放置されている株価は、テーマ買いの動きがなくても見直し余地が大きい。また、総合プラント工事会社で電力やエレクトロニクス、その他諸々とビジネス領域の広さが特長の高田工業所<1966.T>は、原発分野でも持ち前の技術力を存分に発揮する。独自の管理システムを駆使した原発プラントにおける品質管理のクオリティーの高さには定評がある。

あすのスケジュールでは、5月の毎月勤労統計、7月の日銀当座預金増減見込みがいずれも朝方取引開始前に発表される。また、10年物国債の入札も予定されている。海外では6月の財新中国非製造業PMIのほか、5月の米製造業受注が注目されている。なお、豪中銀が政策金利を発表する。(銀)